すぐ横でピッチングしていたしんたろうの横顔が
真剣になっている。
バイオネットの曲がった
穂先の原因を確かめているようだ。
「釣れちゅうで!しんちゃん、フッキングして!」
しんたろうが 合わせを入れたとたん
針に掛かった事に気が付いたバスは
いきなり右舷に走り出した。
予想もしないその突然の
強烈な突っ込みに しんたろうは
戸惑いながらも
左手をブランクにそえて
何とかロッドを立てようとしている。
「しんちゃん、巻けるようになったら リール巻かんといかんで!」
《とらせてあげたい。》
僕の方が焦っていたかも・・・。
我に返り少し余裕が出てきたしんたろうは
いつものように
「ひっとおォォォォ〜 びっぐわぁぁん!」
と叫びながらロッドをこね回し始めた。
浮いてきたバスを見て
2人が
「でかいぃぃ!びっぐわんや!」
と 同時に叫んだ。
しかし、良く見ると針穴が広がっているではないか。
いつもなら 僕は最後のランディングまで
手を出さないのだが
今日は特別な日。
迷ったあげく、僕がランディングする事にした。
「いくでぇ!、しんちゃん!」
「 うん↑うん↑うん↑」
無事ハンドランディングしたそのバスは
なんと
1300g・45cmもあった。
「やったぁ しんちゃん、今までで一番やねぇ!」
「うん、ながせダムではじめてつったバスがびっぐわんやねぇ!」
「よかったねぇ!」
「 うん↑うん↑うん↑」
嬉しくて思わずしんたろうと握手した。
「しんちゃん、6歳の誕生日おめでとう。
いい誕生日になったかえ?」
「そうやねぇ よかったねぇ!」
「お父さんもすごい嬉しいちや!」
「ねえ、ねえ、おとうさん?」
「なにぃ?」
「ルアーってよう?どこにかいにいくがぁ?」
彼は末恐ろしい
虎年である(笑)(笑)。
おわり。